三ツ沢公園=神奈川区=の再整備に関連し、サッカーJ1・横浜FCの親会社である株式会社ONODERAGROUPは6月23日、横浜市に提案していた公園内に新球技場を建設し、市に寄贈するという提案を取り下げたことを発表した。

公園内の「ニッパツ三ツ沢球技場」は1955年に建設され、64年の東京五輪ではサッカー会場として使用された。現在は市民の利用に加え、横浜FCや横浜F・マリノス、YSCC横浜といったJリーグのチームをはじめ、ラグビーリーグワンの横浜キャノンイーグルスなど6つのプロチームが使用。年間を通じた稼働率は国内の球技場の中でも突出している。

建設から約60年が経過し、老朽化が進むとともに、観客席に屋根がなく、雨の中での観戦を余儀なくされている。加えて、バリアフリー化も不十分であることなど、Jリーグのスタジアム基準を満たしていないことから、市は球技場の改修やこれに伴う再整備に向けた検討を進めている。

同社は昨年10月、公園内に横浜FCのホームスタジアムとなる新たな球技場を建設し、市に寄贈することを提案。提案では60年間使用料を無料とすることや新たな球技場の名前を「ONODERAスタジアム」とすることなどが条件とされていた。市は老朽化などを理由に球技場を公園内に建設する方針を示し、同社の提案も含めて再整備を検討するとしていた。

「採算性など考慮」

同社は「法規制や事業採算性などを熟慮した結果、想定計画の実現は困難であると判断し、提案を取り下げざるを得ないと決断した」と提案撤回の理由を説明している。

市は市民から意見を募った上で昨年12月に「再整備基本構想案」を公表。現在のニッパツ三ツ沢球技場は修繕しながら活用し、陸上競技場のそばに新球場を整備する計画を示している。市は「基本構想案に基づき、検討を進める」としているが、完成予定時期などは明確になっていない。

新しい球技場整備にはサッカーやラグビーファンから歓迎の声が聞かれる一方、市が財政難であることや整備候補地に桜が植えられおり、その扱いを危惧する人もおり、意見募集の段階で否定的な声も出ていた。